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「あるある」データ捏造を通して医療崩壊を憂う [時事ネタ]

(検索で)メディカルスクール構想がらみでいらっしゃった方も、嘔吐下痢がらみの方も、医師不足の方も、ちょっときいてください。

ここのところ、それほど忙しかったってわけではないんですが、BLSの講習に出たり、結婚式の打ち合わせしたり、福島の事件がらみでインターネット記事を読んだりコメントしたりで、自分のブログのほうにまわす余力がありませんでした。

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標記の件、国民の皆様の絶大なる抗議により、連日の批判報道、製作会社の社長辞任などなど達成されました。
信じたものに裏切られた、そのショックは多大なものだったのでしょう。

でも、マジな話、納豆やら味噌汁やらレタスやらを(常識の範囲で)たくさん食べたって死にはしないんですよ。

そのエネルギーを、一般受けするように医療記事を書くマスコミや、医療・福祉を削ろうとする政治に向けていただけないでしょうか。

病気にならない、若い、人は、病気持ち、年寄りが苦しい思いをしたって知ったことじゃないかもしれません。
でも、だれだっていつかは病気するし、年取るんです。
このままでは、
救急車に収容されたものの、現状以上に行き先がなかなか見つからなくなるかもしれません。
外来が何時間どころか何日待ちになるかもしれません。
難病にかかっても、今は受けられている公費負担が、あなたが病気になったときには受けられなくなっているかもしれません。
ろくな年金も受け取れず、不釣合いに軽い介護度をつけられ、少ない収入の中から医療費3割(現状では所得に応じて)の自己負担という将来が待ち受けています。
朝日新聞の連載記事で、フリーター(だったかな?)が「老後は老人ホームでメイドさんに囲まれているイメージ」なんて言ってましたが、そんなことできるのは金持ちだけなんですよ。

福島の事件、なぜ日本医学会、日本産科婦人科学会が抗議し、科をまたがって日本中の医師が注目しているのか、ご存知でしょうか。
本来妊娠・出産は命がけであり、現在の医療によって周産期死亡が減少したこと、一方で現代の医療をもってしても救命できないことがあること、癒着胎盤の診断、処置について、執刀医が修羅場の中で手をこまねいていたわけではないこと、ご存知でしょうか。
曲がりなりにも医師である私が最初にマスコミの一報を見たとき、「ここがわからないと、執刀医の判断のよしあしはわからないな」というところがありました。
が、最初の時点で、マスコミは、中立どころか医療が悪いという前提に立って報道していました。
(他でたくさん議論されていることなのでここではこのへんで。)

地域医療崩壊の理由としてよくあげられる「新臨床研修制度」ですが、より正確にいうならば「新臨床研修制度導入の結果として生じた医局の弱体化」であるべきです。
5年ほど前、医局が果たしている役割はそこそこに、負の部分を強調した報道が続けられていました。
医局には、教授の利権、金品のやり取りなど確かに負の側面があり、是正すべき点があったのは事実です。
しかし、一方で、政治とは独立して、僻地にそこそこ安定して医師を供給するシステムとして重要な役割を果たしていたのも事実です。
問題なのは、医局が果たしていた役割の代替手段を確保することなく、新臨床研修制度を導入したことではないでしょうか。
現在はというと、あくまでも研修制度に責任を求めて、医局という言葉はほとんど出てきません。
そして、検証不十分な案件でも報道機関は医師、病院には懇切丁寧にご指導くださいます。
では、なぜ、研修制度を含めて政策の見直しを、という話にはならないのでしょうか。

これも5年ほど前のことですが、北海道・東北地方の医師の名義貸しが問題となりました。
勤務実体のない医師に名前を借りて金を払う、どう考えてもおかしな話です。
でも、なぜ病院が無駄としか思えない金を払ったのかを考えれば、地方での医師不足があったことは明白です。
では、話を東京や大阪に移して、これらの地域では、外来は待ち時間なく受診できますか?
十分な時間を割いてインフォームドコンセントをしてくれますか?
医師は完璧なサービスを提供し、かつ9時-5時で帰宅していますか?
3時間待ちの3分診療と昔から言われていますが、都市部だって医師は足りてなんかいなかったのです。

必要十分な医療を提供することにはお金がかかります。
過労死してもおかしくないスタッフの献身によって、現在の医療(とくに救急・産科など)はまわっています。

納豆やら味噌汁やらレタスやらでは、人は死にません。

しかし、医療・福祉を叩いて・削っていくと、労働条件の悪い部門、採算性の悪い部門から順に、士気・労働条件が低下して、献身的にがんばってきた医師の病院離れが進んで、助かる命が助からなくなるんです。
国は高齢者にお金をかける気なんかありませんから、長寿の国でなくなる日もそう遠くはないと思います。

ご批判もあろうかと思いますが、一医師の思いを知ってください。
そしてだれかと共有してください。
「身内のかばいあい」と批判される医師には、できることは限られています。
国民世論として政治を動かす以外に、方法が思いつかないのです。

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この記事の根拠として参照してください。
毎日新聞「医療クライシス」
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/crisis/

当ブログの1/24の記事も参照してください。

1/31追記:もう少し人目に触れるようにできないかなぁということで、タイトル一部改変しました。


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コメント 2

はじめまして
「あるある~」の問題については、私も相当にこき下ろした話をしてはいるのですが、side_Bさんのお書きになっておられるのを読ませていただいて、それもなるほどなあという思いではあります。私も医師ではありませんが福祉関連の仕事をしている身なので、あなたの思いも理解出来るつもりでおります。
 私のブログでは、かなり長文にて論評しておりますので、読んでいただくのは骨が折れることと存じますが(骨折されちゃ大変!)、コメントいただけると嬉しいです。それでは、このへんで失礼いたします
by (2007-01-29 21:20) 

通りすがりの二児の母

3月入ってもまだあるある問題でさわいでるマスコミにうんざりしつつ。
私も当時別ニュース(ホテルの耐震偽造)をずっと追ってたので、「納豆でそんなにさわぐな納豆で死なん!」と憤慨ものでした。
ちなみに義母が納豆ダイエットを試みましたが、「なーんだウソだったのか、でも納豆おいしいから毎日食べてもいいよね」で今も我が家の冷蔵庫は納豆だらけです。
本題。
「本来妊娠・出産は命がけ」。本当にその通りだと思いますわ! 私は仕事がら障害児をおおぜい見ていて、しかも出産時にお母さんが亡くなってるケースもあって、自分の子のときは、頼むから無事で産まれてくれと必死に祈っていたし、自分は死にたくない!と真面目に思っていたものです。
そして、何の因果か、初産を無事終えたとほっとした直後、産院から救急車で大学病院送りに……。
人生最悪の1日でした。世が世なら、生きてなかったんだろうなと思います。
子どもなんて、そんな簡単にぽんぽん出てくるもんじゃないんだよ!
無駄に恐怖心を持つのはよくないでしょうが、リスクの高さは妊婦も世間十分も承知しておくべきなんです。それがないと、こんなはずじゃなかった→訴えてヤル!にすぐつながってしまうのだと思います。
ああ、でも訴えたもん勝ちみたいな風潮があるから、リスクの徹底くらいじゃダメですかね。それにリスクおしてまで産みたくないわという人で、ますます少子化が? 正直、私ももう出産はしたくない。ダンナが産んでくれるなら、もうひとり欲しいところだけど。
by 通りすがりの二児の母 (2007-03-18 07:06) 

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