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のり巻き [今日のできごと]

物心ついたころから、父は家で飲むと、「母さん、すだれと、おかかと、お下地(醤油)もってきて」と言って、のり巻きをつくってくれた。
喜々として、みんなでわけて食べた。

思春期、「いらない」とか、「なんで自分で(モノを)取りに行かないの?」とか、言ってみせた。
それはそれで本心ではあったのだけれど。

自分が中学から大学にかけての8年ほど、父はずっと単身赴任だった。
2,3週間に1度は帰ってきてくれる、今思えば、まめで、家族思いの父だった。
それでも、自分はおんなじように接した。
あるときは1か月ぐらいろくに口もきかなかった。
「たまに帰ってきた時ぐらい、甘えたいんだよ」って、言わせてしまった。
そのときは自分が正しいとしか思わなかったけど。

一度は奥さんに家事を任せた50前後のオジサンが、単身赴任で、掃除も、洗濯も、食事の準備も、全部自分でこなさなければならない、まして職場で労災があったり、不景気の影響で人員の問題があったりという話をきいていた。
振り返れば、そのときうちの父はどれだけの苦労をしていたのだろうと思う。
そりゃあ、糖尿病のコントロールもつかなければ、狭心症で心臓にステントも入るわけだ。

覚えたての知識で父に「それって狭心症じゃないの?」なんて受診を促したら、心カテ中にプラークがとんで一時ショック状態、IABPが入った状態でCCUで面会した。
もしあそこで父を亡くしていたら、自分の軽口を一生悔いて生きていくことになっただろう。


逆単身赴任状態になってたった1ヶ月半、食生活の乱れか、子どもがいないせいで夜更かしなためか、吹き出物が増えてきた。
今週末の夕飯は実家にお世話になることにした。
父が、いつものように「母さん、すだれと・・・」。
久々ののり巻きは、ご飯が多すぎて、納豆があふれだして、うまく巻けていなくて、ぐずぐずに崩れながら食べた。
父が覚えているかどうかはともかくとして、あのころのことを謝りたいと思ったけれど、結局言葉にはできなかった。
「のり巻きは、飲まない人がつくったらその人の手間が増えるだけ。飲む人がつくればいい。」

これも我が家で受け継ぐ文化のひとつかな。
少なくとも思春期までは、子どもたちも喜んで食べるはずだし。

2011.10.21.追記 院長にご馳走になった寿司屋さんで海苔をお土産にいただいて、わが家でものり巻き始めました。
娘はわざとごはんを残して「コロコロ」「コロコロ」って催促します。
楽しいね。





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