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奈良妊婦死亡立件見送りと新聞社に望むこと [時事ネタ]

毎日新聞の「医療クライシス」最終回。
なんていうんでしょうかね。
やっとおいついてきた、というか。

奈良の立件見送りの件にせよ、他社と比べて医療側に対してソフトな書き方な気がします。

でも、毎日新聞が一定取材を尽くしたと錯覚に陥ってスクープ記事化した時点で、詰めが甘く、その分患者よりだったんですよ。
そして、産科崩壊に一役買ってしまったわけです。
誰か少しでも臨床経験のある医師に相談していれば、医学的判断が難しいケースであることや、夜間の病院の貧弱さや、転送先を探すことの困難さなどを指摘されていたはずです。
「特ダネ」としてあたため続けていたのでしょうが。

思うところが2つあります。
ひとつは、今後、政府の言うことを鵜呑みにせず、医療事故に関していえば素人判断をせずに記事を書くこと。
もうひとつは、今回のことをしっかり新聞社内外で検証すること。そしてそれを記事化すること。一般の方々に植えつけた思考を軌道修正する意味でも。

行政が動かざるを得ない状況をつくったし、医療判断、システムの妥当性を検証する機会ができたのは評価されるべき点ですが、毎日新聞の論調は十分な検証なしに国民、他社を「医者、病院はけしからん」という方向へミスリードしたし、なにより奈良南部の医療体制を崩壊させました。

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忍び寄る崩壊の足音/8止 食いとめよ「士気」崩壊
 ◇低医療費政策、転換が必要

 手術前夜、眠れない患者に睡眠薬を出すことがある。「麻酔前投薬」と呼ばれ、麻酔科の教科書にも出ている一般的な方法だ。ところが、済生会栗橋病院(埼玉県栗橋町)は02年5月以降、実施していない。

 きっかけは同月、60代の女性患者に手術前夜、睡眠薬を出した時の出来事だった。女性は未明にトイレに起き、慣れない睡眠薬でふらつき転倒して右腕を骨折、手術を1週間延期せざるを得なくなった。このため「今の看護師数では、すべての患者の転倒を防ぐことはできない」と、睡眠薬をやめることにした。

 同病院の本田宏副院長は「看護師が十分にいれば、眠れない人の話をじっくりと聞いてあげることで不安を和らげることもできるが、それもできない」と嘆く。

 一方、出産前後の時期を扱う「周産期医療」。早産で赤ちゃんが非常に小さい場合、すぐに対応できる新生児集中治療室(NICU)のある病院で出産した方が、ない病院で生まれてからNICUのある病院へ運ぶより生存率が高く、障害が残る率は低いという。

 しかし、NICUのある病院が常に出産に対応できるとは限らず、出産後にNICUのある病院へ運ぶケースもある。そうした経験を持つ稲城市立病院(東京都稲城市)の伊東正昭・産婦人科部長は「NICUのある病院で出産させてあげたいが、転送先が見つからないため出産後に搬送しなければならない時はつらい」と漏らす。

   ■   ■

 日本と同水準の低医療費政策を続けた英国で起こったことは、日本の将来を暗示する。

 英国の医療に詳しい近藤克則・日本福祉大教授によると、90年代中ごろから医師・看護師不足が深刻化し、医療従事者の士気が落ちた。医師の自殺率は他の専門職の倍、看護師は他職種の女性の4倍に跳ね上がった。患者は十分な医療が受けられなくなり、ピークの98年度には、入院待ちの患者が130万人に達する。がん患者が手術を4回も延期され、手術ができないほど悪化して死亡する事態まで起きた。

 このためブレア政権は00年、医療費を5年間で1・5倍に増額する計画を発表。医学部の定員を3972人から6326人へ増やすなど、医師、看護師の大幅増員も進めた。ただ入院待機患者が80万人も残るなど、まだ改善途上で、近藤教授は「いったん医療現場の士気が崩壊したら、簡単には取り戻せないことを学ぶべきだ」と話す。

 ブレア政権の政策は、ただ医療費を増やすだけではない。がんや高齢者医療、糖尿病など10分野について、行うべき治療など保証すべき医療の水準を国が提示。国立最適医療研究所を創設し、治療法を費用対効果の面から評価している。全国の病院を対象に、待機期間やコスト、主な病気の死亡率などを評価して公表する仕組みも導入。増やした医療費が無駄にならないようにした。

 近藤教授は指摘する。

 「日本も医療費だけでなく、治療効果や医療従事者の労働時間、患者の受診抑制が起きていないかをチェックするシステムを作り、医療費を増やすべきだ。低医療費政策を転換しないと、日本の医療は崩壊する。かつての英国の後を追ってはならない」=おわり

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/crisis/news/20070203ddm002100073000c.html


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