SSブログ

タミフルと異常行動の関係 [時事ネタ]

報道から日があいてしまいましたが。

これまで書いてきたことをまとめたようなものです。
私見です。

ただのカゼには基本的に投薬は不要だと思っています。
カゼは薬で治るものではなく、体の抵抗力で治すものです。
咳や鼻や熱の薬を飲んでも、かえって病原体の排出、殺菌を妨げます。

医学的適応として、細菌感染症に対する抗生物質(カゼの9割を占めるウイルスにはききません)、
症状で体力が奪われることでかえって治癒の妨げになりかねない、痰の喀出困難、など。
社会的適応として、症状のために仕事にならない、家事ができない、など。

ただ、カゼ症状で受診される方≒薬がほしい方だと思っているので、実際には処方することが多いです。
病院の薬を飲めば早くよくなると信じて疑わない方、症状に焦点を絞った薬を出したのに「総合感冒薬を出さなかった」なんてお叱りの手紙をくださる方がいますから、「薬飲みますか?」なんてきいた日には、何言ってんだこの若造は、とか、何のために病院にきたと思ってるんだ、なんて言われかねません。

中にはのまなくていい薬は飲みたくないという方もいらっしゃいます。
そういう場合、私は遠慮なく言っていただいたほうがいいと考えています。

では、インフルエンザの場合はどうか。
タミフルという薬が登場したのはここ数年のことですが、それまで老若男女バタバタと人が亡くなるような不治の病だったかというと、まったくそんなことないですよね。
ほとんどの人が自らの抵抗力で克服してきたわけです。

タミフルは「飲まない場合に比べて発熱期間を1日短縮する」とのことですから、それが福音となる方は飲めばいいし、その程度の効果だったら家で安静にします、、という方は飲まないでいいと思います(あくまでも、抵抗力の弱い方は別です)。

小児、高齢者、免疫不全状態などの患者を除いて、SARSなどの特殊なウイルスを除いて、ウイルス感染症は全身状態をきちんと維持すればほっといたって治るんですから。

話を本題に戻して、
日経メディカル(医療関係者のサイトで、IDとpassが必要です)によると(注 オセルタミビル:一般名、タミフル:商品名)、

----------------------------------------------------------------------------

オセルタミビル服用群(2560人)の11.9%、非服用群(286人)の10.6%にそれぞれ異常言動が表れていたことが分かった。しかし、両群間に発生率の有意差は認められず、多変量解析でも、オセルタミビルの投与と種々の異常言動との間に明確な関連は見られなかった。「異常言動はインフルエンザ脳症の軽い症状ではないかと考えている」と○○氏は解説する。
しかし、今回の調査結果だけでは議論に決着を付けるまでには至らない。実は今回の調査では、保護者アンケートで、薬剤の使用と随伴症状の発生のどちらが先だったかを記載してもらっていなかったため、因果関係が厳密には解析できなかった。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200611/501990.html

----------------------------------------------------------------------------

ということです。
現状では因果関係があるとはいえない、でも、ないと言い切ることもできない、という段階です。

発熱初日、2日目に患者を一人にしない

ことによって、突発的な行動に対処するように指導している、とのことでした。
なお、飲むと決めた場合には症状がよくなっても必ず5日間飲み続けてください。

3月1日追記:最近、異常行動についての報道が立て続けにありました。
可能性が否定できない以上、本物の「薬害」かどうかを見極めるためにも慎重な対応、詳細な調査が必要だと思います。
上述のように、多くの人にとってタミフルは必須の薬ではないわけですから。
タミフル服用者の異常行動のみ報道されて、非服用者の異常行動は「ネタにならない」というバイアスがかかってはいないか、とも思っています。

----------------------------------------------------------------------------

タミフルとの因果、審査せず 高校生死亡、厚労省が却下

 インフルエンザ治療薬「タミフル」服用後に戸外に飛び出し、トラックにはねられて死亡した岐阜県下呂市の男子高校生=当時(17)=の父親が、同薬と死亡との因果関係を審査するよう厚生労働省に申し立て、実質的な審査なしに却下されていたことが4日、分かった。

 父親は「薬害タミフル脳症被害者の会」代表の軒端晴彦さんで、厚労省を相手に却下処分の取り消しを求める訴訟を起こすことも検討している。軒端さんが同日、名古屋市で開かれた集会で報告した。

 高校生は軒端さんの長男で、平成16年2月にA型インフルエンザと診断され、医師から処方されたタミフルを服用。直後に自宅から国道に飛び出し、大型トラックにひかれて死亡した。

 独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」は昨年7月、副作用被害救済制度に基づき「タミフルとは別の薬の副作用による自殺企図」と判定。軒端さんは不服として、厚労省に審査を申し立てた。

 軒端さんによると、不服申し立てに対する同省の決定は昨年12月27日付で「副作用被害救済制度で既に遺族一時金などが支給されており、判定による申立人の利益侵害はない」とした。

 軒端さんは「長男が自殺する理由はなく、副作用の原因がタミフルではないという根拠も不明」と話している。

 タミフルには16年6月以降、添付文書に「異常行動、幻覚、妄想があらわれることがある」と記載。一方で厚労省研究班は昨年末、タミフルを服用した場合と服用しなかった場合で、異常行動を起こす割合に統計学的な差はなかったとする調査結果を発表している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070205-00000019-san-soci


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 2

ハルナ

初めまして。
私は、薬科大にかよっているんですけど、

自然治癒と植物成分にとても関心があって、
なんでもかんでも薬、クスリってのはよくないと思うし、

タミフルのまなくても、異常行動例は多いと聞きます。
インフルエンザ脳症とみています。
by ハルナ (2007-03-30 08:49) 

side_B

しばらく外出していたのでだいぶ遅くなりましたが、お返事を。

薬とはうまく付き合えばいいと思うんですよ。
私だって、実際のところ「社会的適応」で風邪薬飲みますから。
ベースは自然治癒力であって薬でどうにかなるもんじゃない、ってことを知っているかどうかの問題で。

インフルエンザが幼小児、高齢者では命を奪いうる病気であることは事実です(それは本文でも否定していません)。
私もネット上でいろいろみているのですが、タミフルによって救われたであろう命があることを銘記すべきであるという小児科医の意見は少なからずみられます。
薬学生さんということで「で、私だったらどうしよう、、」という視点でお話できたらよかったかなぁと思います。
by side_B (2007-04-06 16:09) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。