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時間外にどれだけ対応できるか~厚木市立病院の事例 [時事ネタ]

亡くなった方のご冥福をお祈りします。

356床のこの病院の救急診療体制は外科系医師2人、内科系医師1人、小児科医師1人。
http://www2.city.atsugi.kanagawa.jp/hospital/byoin03/page_1911.html
緊急放送をすれば医者が湧いて出てくる平日の日中とはまるで状況が違います。
病棟患者は安定していて、すべての医師が救急対応できる状況だったのでしょうか。

心肺停止患者が来院するまでの限られた時間に、この方を診察することはできたかもしれません。
が、挿管(気道確保のチューブ)や除細動器(いわゆる電気ショック)、点滴、検査の準備など、心肺停止患者を受け入れる準備に追われていたことは間違いありません。
心肺停止患者が来院したら、どれだけ少なく見積もってもベテラン医師1名、普通は2名の医師はそちらにかかりっきりです。
医師、看護師あわせて、どれだけ少なく見積もっても4名は必要です。
多ければ多いにこしたことはありません。

頭痛訴えたこの患者さんが、看護師のトリアージで優先的に診察を受けられたかどうか、問診看護師が「心電図をとりましょう」と進言するような症状を示していたかどうか、その場にいなかったものにはわかりません。
他の患者を診ていたためか、この方の診察がなかなかできなかった理由は報道のみからではわかりません。

救急外来が混雑している場合、順番待ちできると判断されたら1時間でも2時間でも待っていただくことはザラです。
医師はできるだけ早く多くの患者さんを診ることで精一杯なので、待合に出て対応している余裕はありません。
優先順位が高いと判断されなかったのであれば、処置で手一杯だったであろう看護師が患者さんのもとにうかがわなかったのも無理なかったものと思われます。
症状の悪化がみられたのであれば、事務(医学知識に関しては一般の方とほぼ同レベル)が自らの判断のみで対応したのはまさに「事務的」に過ぎたのは確かです。
まずは看護師に連絡し、それでも人手が足りず診察できないようであれば救急車を要請せざるをえなかったかもしれません。

トリアージでこの患者さんが優先的に診察され、急性心筋梗塞と診断され、循環器科医の呼び出しがスムースにできれば、救命できた可能性は高まります(とはいえ、数時間の経過なので、致死性不整脈を起こして残念ながら亡くなっていた可能性は少なくありません)。
循環器科医が呼び出せず他院に転送になっていたら、心肺蘇生をしている傍らで転送先を探す電話かけをしなければならない悲惨な状況だったことでしょう。

当院の話ですが、当直中に緊急手術があり、緊急手術のさなかICUで急変があって、救急外来をみられる医師がゼロになったことがあります。
その間、看護師の判断でかかりつけの患者さんであっても救急車をお断りし、来院された方も待てないのなら他院へとご案内したとのことでした。
夜間、休日の病院なんてその程度の医師数しかいないのですが、手術の手を止めて救急車を受けるべきでしょうか、ICU患者を放り出して外来患者を診るべきでしょうか。
このニュースの事例が特別なのではなく、どこの病院でも起こりえることだと感じます。

毎度のことですが、病院が悪いと決めつけるには、情報が足りません。
昨今の産科医療の報道と、きっと変わらないと思うのです。
こんな酷い事例があった!
ここの病院が悪い!
後になって検証したら、病院はがんばっていたらしい・・・。
産科(この件でいえば救急)医療体制を見直そう!

またこうして、マスコミは救急医療に従事しているものの志をへし折って、何事もなかったように「国民のニーズに応えています」「社会を良くしました」というツラをするのかなぁ。

ちなみに、救急専門医は、日本にはそれほど多くありません。
普通に内科や外科などを専門にしている医師が、「片手間」にやっているのが現実です。
つまり、ほとんどの医師が関係していることなのです。

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厚木市立病院:「他に急患」診察せず、転送直後に死亡--先月 /神奈川

 厚木市立病院(厚木市水引1)で8月、当直中に救急受付を訪れた市内の無職男性(73)が診察を受けないまま別の病院に転送され、直後に死亡していたことが分かった。市立病院側は「心肺停止の患者が搬送される予定で、男性側に『対応できないので他の病院へ行ってください』と説明した」としているが、遺族は「事務職員しか対応せず、そんな説明も一切なかった」と食い違い、市立病院の対応に憤っている。

 男性の妻(67)の話では、日曜当直体制の8月12日午前、男性が「頭が痛い」と訴え、妻の運転する車で同病院を訪れた。救急受付の脇のソファに横になり、看護師が妻に体温計を渡した。いっこうに診察してもらえないので催促すると、職員から「1時間半待つことになる。(嫌なら)他の病院へ行って」などと言われたという。別の患者を搬送してきた救急隊員がやりとりに気づき、見るに見かねて救急車を要請。別の病院に運ばれたが、直後に急性心筋梗塞(こうそく)で死亡した。

 市立病院事業局は取材に対し「心肺停止状態の患者が搬送されることになり『救急車を呼んで別の病院で受診して』と話したが、男性側が『病院が救急車を呼ぶべきだ』と主張したので『規則で、病院が救急車を呼ぶのは医師、看護師が同乗する場合だけ』と説明した」と話している。

 男性の妻は元看護師。男性は以前に心筋梗塞で市立病院の前身の県立厚木病院に入院したという。「待っている間、医師も看護師も来なかった。市立病院の対応はひど過ぎる。こういうことが二度とないよう、声を上げることが大切と思った」と話した。【佐藤浩】

http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/kanagawa/news/20070911ddlk14040579000c.html


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