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「大変な職業についてしまった」 [お医者のキモチ]

またもや更新サボってますけど。
最初の2週間は、ネタないからまあいいや、で、あとの2週間はそれどころじゃなかったので。
とはいえ、今日書くのはしばらく前の話です。
職業柄、あまりリアルタイムでは書きづらい内容もあるわけで。

約2年前、医師になりたてのころ、「これは大変な職業についてしまった」と、戸惑いというか、焦りというか、不安というか、に襲われました。
内科でいえば肺炎、外科でいえば鼠径ヘルニアの入院治療がどんな経過をたどって、一般的に何週間で退院できるのか、もいまいちわからない状態。
知識としてはいろいろ知っていても、どの点滴製剤をどれぐらいのスピードで使って、どの薬何mgを何回にわけて、なんてことは、大学の医学教育ではあまり実践的には行われていない(国民の期待に沿わないであろう現実だが、逆に医学生にここまで踏み込んだ実習をさせることに国民的な合意が得られるとも思えない)。
そんな若葉マークの自分が、指導医と相談しながら、必要に応じて軌道修正をしながら、患者さんの治療にあたっていました。
時には予約外で技師さんに頼み込んで先手先手で検査計画を立てないと、自分のせいで患者さんの入院期間が延びてしまいます。
働き盛りの方はできるだけ早く退院して仕事に復帰していただかなければなりません。
高齢の方は手術などの積極的な治療を勧めるかどうかという医学的な側面はもちろん、独居や日中世話をする人がいない方に安全に退院してもらうにはどうするかも考えなければなりません。
手に余るような重症の方は、なんとか真っ白になりそうな頭の整理をつけて、自分なりの考えをまとめて、循環器や透析などの専門の先生に泣きついて意見をきき、しかるべき対処をしなければなりません。
救急患者さんへの適切な対応も、現実にはひとつひとつの積み重ねで学んでいきます。
若葉マーク研修医の実態はこうでありながら、ベテランナースから指示を求められ、病棟スタッフはもちろん、薬局、検査、リハビリなど各部署に「指示」を出し、患者さんからは「(看護師ではなく)先生から説明してほしい」といわれるわけです。

自分のさじ加減ひとつで、少なくとも短期に、場合によってはそれこそ人生全体を狂わせることになる職業であると、いまさらながらに認識したことを覚えています。

3年目、外科医になってから、それに近い「恐ろしさ」を感じるできごとがありました。
精査入院で予後の長くない病状が判明し、希望で在宅療養をすることになった方。
家族から、「本人は『元気になったら~~しないとね』と先々の話をしていているが、家族としてはそろそろ身の回りの整理をしてほしい。先生から今一度病状の説明をしてもらって、『準備』するようにほのめかすきっかけにしたい」という趣旨のお話。
目がうるうるしそうでした、実は。
これは大変な役目を仰せつかってしまった。
私のような若輩者に、一言で言えば、引導を渡してやってくれ、というわけです。
「なんて職業についてしまったんだ!」という感覚が蘇るのがわかりました。
後日、いつもどおりに、優しく、笑いを交えながら、今後の療養上のことを話し、そしてその中で死の準備を促し、患者さんは退院されました。
少しでも元気な状態で、穏やかにご自宅で過ごせているといいのだけれど。


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