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熱にはタミフル?~インフルエンザ [時事ネタ]

ご多聞にもれず、当院でもインフルエンザの簡易検査キットのストックがほとんどありません。
一時は10~20しかない、というときもありました。
今は、入院治療が必要なレベル、等医師が必要と認めない限りは検査をお断りしています。

一方で、感染症学会が疑い例も含めて抗ウイルス薬を投与しなさい、と提言したので、発熱などで受診された方には片っ端から「早期投与が推奨されてますが、どうしますか」ときくようになりました。
検査で陰性だけど実はインフルエンザ、せいぜい37℃台だけどインフルエンザ、下痢だけどインフルエンザ、今のところ咳や鼻水だけだけどインフルエンザ、扁桃炎だけどインフルエンザ合併、などなど、いくらでも可能性があるので呼吸器症状、消化器症状の方がインフルエンザではないことを証明するのは事実上不可能だからです。

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日本感染症学会は15日、新型インフルエンザ感染者の重症化を避けるために、持病のない成人、子どもらにもタミフルなどの抗ウイルス薬を早期に投与すべきだとする提言と診療指針をまとめた。持病のない成人への投与は不要とする世界保健機関(WHO)の見解について、海外で死者が多数出たことから「危険」と指摘した。

 提言では「新型は弱毒で季節性と変わらないので厳重な対策は緩めていい」という国内の一部意見について、「誤り」と指摘。タミフルなどの抗ウイルス薬について「診断で感染が疑われた場合は、可能な限り全患者に早期から投与すべきだ」と結論づけた。簡易診断キットでは見逃しもあるため、仮に陰性でも症状からインフルエンザが疑われたら投与が必要と定めた。

 タミフルの積極的な使用については、耐性ウイルスの発生や、10代の患者の異常行動が指摘され、慎重論もある。しかし、提言や指針では、重症化して死亡することを防ぐことのほうが重要と結論付けた。

 WHOや米疾病対策センターは持病のない患者への使用は不要としている。感染症学会の新型インフルエンザ対策委員会座長の渡辺彰・東北大教授は「海外と比べて日本の致死率が低いのはタミフルの早期投与によるものだ。抗インフルエンザ薬の備蓄は5千万人分以上あり、早期投与で重症化を防ぐのが一番重要」と話す。

 指針と提言は、同学会のホームページで公開を始めた。
http://www.asahi.com/national/update/0915/OSK200909150134.html?ref=doraku

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そこへ来てこんな報道があったりして。

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新型インフルの小1男児死亡=最年少、脳症で
 滋賀県は22日、新型インフルエンザに感染した同県守山市の小学1年生の男児(7)がインフルエンザ脳症で死亡したと発表した。新型に感染したか感染の疑いのある人の死亡は18人目。男児が最年少で、小学生では2人目となった。
 同県によると、男児はこれまで数カ月に1度熱を出すことがあり、周期性発熱症候群の疑いがあると診断されていた。19日朝から発熱し受診したものの、インフルエンザの検査は行われず、解熱剤を処方され帰宅した。翌20日に40度の熱を出して別の診療所を受診。簡易検査でA型インフルエンザ陽性となり、けいれんなどの症状が表れたため病院に入院し、タミフルを投与されて人工呼吸器を着けた。容体が悪く、同日夜に滋賀医大付属病院に転院したが、21日夜、死亡した。
 インフルエンザ脳症では、強い解熱剤成分が症状を悪化させることが分かっており、日本小児科学会が注意を呼び掛けている。今回処方されたのはアセトアミノフェンで、同県は「適正な薬だった」としている。(2009/09/22-14:13)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009092200070

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亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。


有名ポータルサイトのコメントをみて、一般的にはこんなふうに受け止められるんだなぁ、と。

発症初日に診察した医者はなぜインフルエンザの検査をしなかったんだ!
→インフルエンザの検査は発症12~24時間で陽性になるとされているので、おそらく検査するには早すぎると思われます。というそもそも批判されるには当たらない事柄。
検査キットが足りていても、在庫は残しておきたいし、求められた数だけホイホイとこなすには相当なマンパワーが必要です。
政府は早めの受診を勧めているようですが、医療機関としては早すぎる受診が多いし、待合は患者同士でうつしあう格好の伝染の場だし、政策にはそういう視点が必要です。

解熱剤のせいで悪くなったんだろう!
→当初「アセトアミノフェン」の記載がなかったためとは思われるのですが、そうであったとしても思い込みによる書き込み。
日本という国では、発熱の診療で「解熱剤はくれますか」と言われることはあっても、「解熱剤は要りません」と言われることはほとんど皆無です。
し、発熱のせいでぐったりするようであれば解熱剤に頼るのは悪いことではありません(日ごろから全科当直してますから、もちろん熱が出る原因とか、39℃でも元気にしている子に使う必要がないことは重々説明しています)。

発症翌日にはタミフルの投与も始まっています。通常のインフルエンザ診療であれば、医療側の過失は指摘できない経過です。
季節性インフルエンザでもこのように急速に病状が変化することがあるのか、新型だからなのかまでは私にはわかりませんが。

最初に診た診療所の医師は信じられない!
→結果からは、そう思われてもしかたがないかもしれません。

冒頭にも書きました通り、発熱、呼吸器症状、ときには消化器症状で受診されたら、インフルエンザではありません、と断言することはなかなか困難です。
最近の診療では、「従来なら『喉が赤いから風邪から来る熱でしょうね、症状に合わせた薬を出しますので様子を見てください』と言うところですが、インフルエンザを疑う症状があればタミフルを早期投与しなさい、ということになっています。」
これに引き続きタミフルを飲むことの意義、異常行動とタミフルとの因果関係ははっきりしない、云々カンヌンをみーんなにお話ししているわけです。

ただの風邪だろうなぁ、と思いながらタミフルを出した人は数知れず。
でも、発症数時間で受診の方でもタミフルを出しておかなければ、上のように報道され、地域やウェブなどで私刑にさらされる現状。

命が失われることは大変悔やまれることです。
しかし、この国の安全神話は空恐ろしいですし、インフルエンザの第2、第3波が来た時にタミフルの在庫や耐性の問題は大丈夫なんだろうかと不安になります。





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