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4年目の心境 [お医者のキモチ]

外科医になって3年半が過ぎました。

年明け早々緊急手術のためにスタッフを招集したり、家族とのショッピングを切り上げて呼び出しに応じて病院に出向いたり、内視鏡的に胃潰瘍の出血を止めたり、癌の病巣を切除したり。
ビジュアル的に分かりやすい形で、救命したり、あるいは命を落とさないための手立てを取ったりしています。

謙虚であれ、と思いつつも、一方で、命を救う、寿命を延ばす、あるいは元気な人の生活の質を改善する(ヘルニア、胆石などの良性疾患の予定手術)ことに貢献しているという自負はあります。

たしかにそうらしいのですが、患者さんの生命力、底力に、何度も助けてもらった日々でもありました。
術後合併症に、ある人は淡々と、ある人は半ベソかきながら、打ち勝ってくれました。
超高齢のおばあちゃんは自らの意志で準緊急手術を望み、ちゃんと元気に退院しました。

笑顔で退院することが目標なのはドラマの世界の話です。もちろんそれが短期目標ではありますが。
病気を治す、それによって安心感をもたらすために尽力するのは当たり前のことで、術前とかわらない生活を取り戻すための支援をすることも、外科医の大切な役割だと思っています。
良性疾患の緊急・準緊急手術後におなかの症状がなかなか改善せず、根気よく何カ月も通院してくださった末にやっと職場復帰を果たしたり、悪性疾患の術後になかなか体重が増えずあまりにガリガリで毎月お目にかかることに恐怖感さえあった方がだんだんふっくらしてきたり。
こちらもうれしくて涙目になってしまいます。「患者さんの人生」という肩にのしかかる重しが一気に軽くなるのも、まぎれもない事実であり。
患者さんにいいことがあると、素直に喜びを表現するようにしています。素直にうれしいのはもちろん、主治医が笑ってくれない時の怖さ、不安を、娘の一件で思い知ったから。
外科で付き合いの長い患者さんというと、たいていは悪性疾患か、術後経過が一筋縄でない良性疾患の方のどちらかですが、そんな方々に「センセーの顔を見るとほっとするんだよ」って言ってもらえると、こちらこそこんな若造を信じてくれてありがとうございます、という気持ちになります。


外科をやりたいのであって、癌と戦おうなんて思ってなかったんです、実は。
ところが消化器疾患を主に取り扱い、来るべくして癌患者さんと向き合う日を迎え、今日に至ります。
はじめの1年はこんな http://blog.so-net.ne.jp/side_B/2008-03-01 日々でした。

医学的な面でいうと、今は、自分の中で患者さん個々の手術のイメージ(どの膜を切開して腸を授動するとか、どの血管をどの分岐で縛るとか)を組み立てておいて助手をしてくれる上司のおんぶにだっこにならないとか、いかに抗癌剤の副作用を悪化させずに長く使い続けられるようにするかとか、ちょっと経験を積んできたなりの視点で取り組んでいるつもりです。
患者さんとのお話の傾向と対策はソラで出てくるようになりました。経験したことがないから答えに窮するということもめったにないし。
bad newsを伝えるのはどうしたって億劫だけれど、それを何日も引きずってくよくよすることはなくなりました。
そういう割り切りも、医者にとって必要な能力の一つだと思っています。
感情移入が過ぎて、仕事を休む一因になった研修医が以前いたから。人間として素晴らしいことだとは思うのだけれど、自分が元気でなければ、患者さんのことを守れない。


すっかり消化器の医者になったなぁとも思います。
研修制度が変わる前からローテート研修をしていた病院なので、どの科の医者も大人も、子どもも、妊婦さんも診ます。
ただ、急性期の初期対応はするけど、そこから先は内科なり、循環器科なり、それぞれの専門家でよろしく!ということが当たり前になりました。
逆に、消化器や外傷のことなら、他科のベテランDr.よりもずっと経験豊富になりました。
一人で全体をカバーすることなんて到底不可能なぐらい医療が進んだ今、当たり前って言えば当たり前だけれど。

思いついたことを、徒然に。





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